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まなざしが他者に向いている−これは、ボランティアとして外せないポイントです。その姿勢が、自分を他者との関係、出会いへと呼び出し、さらにそれが「共に」という関係に発展し、ボランティア活動を支えていくことになるのです。
さて、「まなざしを他者に向けて」などといったところで、そう簡単にできることでしょうか。ボランティアのチャンスなんて、そうそう身近に転がっているでしょうか。
ちょっとまわりを見てみましょう。通りに飛び出して自転車が停めてある。ひょい、とよけて通るのが普通です。でも、みんなが通りやすいようにと、ちょいと脇に置き直すのがボランティアです。
自動エレベーターで、だれかが乗ってくる。扉が閉まりだしてもなにもしないのは気の利かないフツーの人。サッと“開”のボタンを押すのがボランティアです。
街角で地図を片手にまごついている旅人に気軽に声をかけたり、電車やバスで席を譲るのも、けっこういいボランティア・レッスンの基礎編になります。
「そんなこと」といわずに、実際にやってみるとそのときの自分の心理状態を観察するだけでも、面白い発見があります。そして、それを数回繰り返すと、もう平常心で、体のほうがスッと動くようになります。
日常、その程度のことは人間としてごく自然なことで、わざわざ“ボランティア”などとしゃれた呼びかたをするまでもないのはたしかです。ところが、そんな当たりまえのことがはばかられ、むしろ人間的には冷淡で不自然なこと、みっともないことが平然と行われているのが、現代の、とくに都会の現実です。
そもそも電車やバスにシルバーシートを設けなければならない

 

 

 

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